本シリーズでは、株式会社セルメスタの自主経営の“土台づくり”の軌跡をレポートとしてまとめ、読者の皆さまに、セルメスタのリアルな現場をお伝えできればと思っています。
初回では、「セルメスタが自主経営を志した背景」をお伝えしました。その後、実際の現場での、“土台づくり”の様子をお届けしてきました。今回は、特に事業シートの目的地図のアップデートについて対話をして、タクティカルミーティングを行い、今後の方向性について話し合いました。
1.アップデートされた目的地図について対話
2.自分たちでファシリテータを行いタクティカルミーティング運営
3.今後の取り組みの方向性
1.アップデートされた目的地図について対話
1-1.前回の目的地図からの変化点の共有
熊倉:「2枚あり、インフラの目的地図と事業の目的地図があります。事業の目的地図を今回は大きく変えました」
関根:「『じゅんかん』。ダッシュボードって言われている経営指標管理は、目的地図のどこに描かれますか?」
熊倉:「ここらへんからなぁ。フォースグループの上のところ」
関根:「そうですよね」
熊倉:「事業の目的地図については、3つの健康軸のうち、身体的健康、精神的健康についての事業を増やしたいと思っています。身体的健康という分野では、常備薬の斡旋があり、郵送検診があり、遠隔医療もやっていきたいです。今回、事業の目的地図のうち、まずは、郵送検診について書いてきました。
というのも、家庭常備薬の斡旋はサービスの提供プロセスとしては、物流センターから商品を家庭に郵送して終わり。一方郵送検診のサービス提供プロセスは、物流センターから検査キットを家庭に郵送して、血液や尿などの検体をご家庭から送ってもらって、検査センターで検査して、検査結果を返す。
このように一番長い郵送検診のサービス提供プロセスをきちんと営業・システム・物流部署の様々な人と話をして目的地図を作成出来たらと思っています。そうすれば、家庭常備薬などの他の事業についても目的地図を書きやすくなるだろうと思っています。」
1-2.『じゅんかん』から生まれる新しい可能性
関根:「『リードリンク』に対してもう一個『じゅんかん』がありまして」
熊倉:「お〜、ようやく『リードリンク』って呼んでくれたね」
関根:「はい、ようやく慣れてきました(笑)。今ってペットって非常に家族に近い関係じゃないですか。そのペットの健康も包括するっていうのは可能性ありますかね?」
熊倉:「それは非常に可能性ありますよね〜」
関根:「健保という枠から、さらに広げていきたいですよね!」
吉原:「今、セルメスタのメンバーの中で、自分たちの事業は人々の健康への貢献している、っていう意識はどのくらいありそうですか?」
関根:「最近は出てきていると思いますよ。2年前からセルメスタでは健康経営に取組んでいます。その健康経営の推進メンバーはセルメスタ社内向けの健康経営の活動を紹介する機関紙を自主的に工夫して作っていますし。最初は、健康経営って何?という感じだったと思いますが、健康って皆興味あるものじゃないですか。なので、だんだん自分ごと化して、自主的に動けていると思いますね。医療については『治す』ことに集中されているから、健康経営のメディアで、『病気にならない』予防にもフォーカスすると非常に良いですね」
藤谷:「『じゅんかん』です。目的地図の丸1つ1つをロール化するにはどうすれば良いんでしょうか?」
吉原:「1つ1つをロール化する必要はなくて、一定のまとまりとしてロールをまずは作ってみるというイメージです。作ってみて、やってみて、『じゅんかん』があればガバナンスミーティングで変更していくというプロセスです」
1-3.実現したい状態に向かうための目的地図(業務フローではない)
熊倉:「そうですね。目的地図って業務フローを書いているわけではないですと伝えて頂いた時があります。目的地図って今やっている役割を一旦置いて、現状を想い描く未来に変えるために何が重要になるか、ということを書き出しているんですね」
藤谷:「なるほど」
熊倉:「『じゅんかん』です。現場では、現状の業務フローと私が書いた目的地図の理想像をどう実現しようかというところで、どうしようという話になると思います」
吉原:「差分があった時は、優先順位に従って、少しずつ変えていくと良いと思います。移行するときの負担感も考慮しながら」
熊倉:「であれば、この目的地図をどう変えていくか。現状の役割についても書いていくべきだな、と思いました」
吉原:「お願いします」
1-4.「今は目的の視点で話せている。だんだんと目的思考やロールに馴染んできた」
吉原:「こういう目的地図を見て理解して、実行していく中で、現場の方の全体俯瞰力が上がってくると思います。経営者の能力の高いところはこの全体俯瞰力だと思います。目的地図を考えて、実行することを繰り返すことでメンバーの方もこの抽象思考が鍛えられると思います」
関根:「そうですね。今は組織の目的の視点に基づいて議論することが出来ています。前回までは役割と自分を繋げながら喋っていたので、経営者の抽象思考が出来ていなかったんですよね。だんだんと目的地図の視点やロールで考えることが馴染んできた気がします」
熊倉:「郵送検診事業の売上高を因数分解すると、単価×数量になります。私は事業の目的地図をこの考え方をベースに展開しています。では、目的地図の単価の話にいきたいと思います。サービスの魅力が上がれば単価も取れると思うので、サービスの魅力を上げていきたいなという思いがあります。今は、定期購買の機能がないのでそれを作りたいと思っています。
また、会員制度を階層性にして、一番高いグレードの会員は有料制にして、年一回郵送検診プレゼントみたいな立て付けに出来たらなと思っています。さらに、検査ラインナップを増やしていきたいです。また納期を短くしていくということもしたいな。そして検査結果の見易さを追求していきたいですね」
藤谷:「定期購入、検査結果の見易さや納期短縮は、今開発している基幹システムと絡んでくるところですね。出荷日数をデータで欲しいというところについて、ここは対処しないとですね」
1-5.「私なんかの役割は、若い世代に新しい道を見せてあげられることじゃないかなぁと思います」
関根:「新しい事業についてICTはもう密接に絡んできますよね。若い世代は非常にこういう新しいことに関して興味があるんじゃないかなぁ。私なんかの役割は、若い世代にこういう新しい道を見せてあげられることじゃないかなぁと思います」
吉原:「関根さんの『じゅんかん』素晴らしいですね」
1-6.「熱を持って仕事をすると新しいものが生まれてくる」
関根:「やっぱりみんな熱を持って仕事をすると新しいものが生まれますよね。全社員がこういう想いでやってくれたら、会社はどんどん変わっていきますよね」
吉原:「それを実現するために大切なことに取り組んでいきたいですね」
熊倉:「最後に郵送検診事業の目的地図は案件ごとの採算管理のところを説明します。どうですか、藤谷さん、なにか『じゅんかん』はありますか?」
藤谷:「『じゅんかん』です。目的地図にもっと営業の仕事が入るといいかなと思います。現状だとコスト削減についての項目が多い気がするので。」
熊倉:「そうですね。削減だけでなく、付加価値っていう指標とか生産性や創造性っていう指標にした方が、広がりがあるかなぁ」
吉原:「NOLでは、あるロールの中に、発見数、実験数、学び数っていう指標があります。役割の目的に自分の価値観が合っていれば、もう自然と動いています」
1-7.「目的地図に立ち返ると、またワクワクできるようになる」
関根:「いいですね。仕事って進んでいくと、つまらなくなってしまうときがあるじゃないですか。でも、目的地図に立ち返ると自分たちの目指していたものはどこだっけ?という確認になる。そしたらまたワクワク出来るようになるんじゃないかなと思います。今日は俯瞰力っていうのが非常に大切だなと実感しました。社員も一人一人俯瞰力が必要ですよね!」
藤谷:「そうですよね。普段は来た球を打ち返すだけですね」
吉原:「マネージャーが社員さんと話し合うときも、1年に1回じゃ足りないですし、1ヶ月に1回も足りないです。やっぱり週1回くらいでやっていく方が良いと思います。その時、目的地図を見ながら話し合うことで俯瞰力が自然と養われていきます」
関根:「ここって常に皆で振り返りながら、やっていけたらいいなと思います。」
熊倉:「そうですね。目的地図の中に、発見数、実験数、価値観の実現数を入れることが大切だなと思いました!」
関根:「それは良いですね。多分これなら我々だけではなく、この目的地図をみんなに伝えるときにも、伝わるんじゃないかなと思います。また、目的地図があれば、『リードリンク』
とすぐに想いの共有や更新ができるようになるな、と思いました」
吉原:「『リードリンク』、目的地図のアップデートになりましたね?」
熊倉:「幸せです(笑)」
1-8.「頭の中を割ってみんなに見せたいと言っていた。目的地図がそれ」
吉原:「ありがとうございます(笑)。では、一旦、目的地図のアップデートを終えてのチェックアウトをしましょう」
関根:「では、私から。目的地図って非常に価値あるものだと思うので、振り返りできて非常によかったです」
藤谷:「今、新人を2人預かっておりまして、どのくらいの期間でこの目的地図の理解を進めてくれるんだろうと思いました」
熊倉:「昔からよく自分の頭の中を割って、みんなに見せたいということは言っていたんですよ。この目的地図をみんなに共有すれば、それが叶うだろうなと思いました。目的地図を外だしすることで、社長個人のものから組織のものになり、社員のやりたいことと繋がると組織がどんどん活性化するんだろうなと思って、非常にワクワクしました!」
関根:「私は、経営者と現場の間に入って、現場に浸透させていく役割ですよね。でも、経営者の気持ちって現場もいつも知りたいんですよ。現場に落としていく時は、自分がリードリンクとして目的地図を共有していくわけですよね。それができるようになるツールだなと思いました。ありがとうございました」
2.タクティカルミーティングの振り返り体験(『じゅんかん』タイム)
藤谷:「私が『ファシリテーター』をやりますね。それでは、タクティカルミーティングのチェックインを始めたいと思います」
(チェックイン完了)
2-1.『じゅんかん』タイム その①「ファシリテーターとロールの2役」編
ロールからの『じゅんかん』は下記2つ。
・GDL物流移転プロジェクト
・管理会計構築
藤谷:「最初のGDL物流移転プロジェクトはどのロールからどのロールからどのロールへの『じゅんかん』ですか?」
関根:「『FMGマネジメント』から『円滑システムPDCA』の『じゅんかん』になります」
藤谷:「では、何が必要になりますか?」
関根:「スケジュールの確保はどれくらいか確認したかったです」
吉原:「では、ロール同士で会話しましょう。藤谷さんは『円滑システムPDCA』ロールでもありますね。なので、『ファシリテーター』ロールから『円滑システムPDCA』へ交代してロール同士で話しましょう」
藤谷:「分かりました。これは打ち合わせをして話したほうがいいですか?」
関根:「いえ、管理会計構築にはどれくらいかかるのかって確認したかっただけです。今想定しているスケジュール感を教えてもらえれば大丈夫です」
藤谷:「じゃあ簡潔にお答えすると、各グループに管理会計について3時間ずつ取りたいと思っています」
関根:「藤谷さん、じゃなかった、『円滑システムPDCA』ロールの方でも詳細をどのようにしていくか案ってありますか?」
藤谷:「この後の打ち合わせで詳細決めていこうと思っています」
吉原:「藤谷さん、今度は『ファシリテーター』の役割に戻りましょう」
藤谷:「他に何か必要なものはありますか?」
関根:「必要なものは得られました」
藤谷:「『じゅんかん』にフォロー出来ていますか?」
関根:「出来ています」
吉原:「ありがとうございます。完璧です。きちんとファシリテーターと『円滑システムPDCA』のロールを行き来出来ていたと思います。ではファシリテーターを関根さんやってみましょう」
2-2.『じゅんかん』タイム その②「初めてのファシリテーター」編
関根:「分かりました。『GDL物流移転プロジェクト』についてはどのロールからどのロールの『じゅんかん』でしょうか?」
藤谷:「『円滑システムPDCA』から『リードリンク』への『じゅんかん』です。スケジュール間の共有をお願いしたいです」
熊倉:「スケジュール間共有するための打ち合わせの日程を設定して頂けると」
藤谷:「そうですね、それとGDLの社長さんとどんなお話をされているのかお聞きしたい」
熊倉:「2月〜3月にシステムを作ろうという話になっていますね」
藤谷:「了解しました。それでは、コミッティーで聞くのも良いかなと思います」
熊倉:「そうですね、そちらで確認してもらった方がいいと思います」
関根:「各ロールありがとうございます。『円滑システムPDCA』からコミッティーに打ち合わせの設定をするので問題ないですか?」
吉原:「素晴らしいです。ただファシリテーターは議論の中身に入っていかないです。なので、どのロールが行いますか?という質問だけで大丈夫です」
関根:「分かりました。ではどのロールが行いますか?」
藤谷:「『円滑システムPDCA』が打ち合わせの設定をします」
藤谷:「必要なものは得られましたか?」
関根:「必要なものは得られました」
関根:「このプロセスは『じゅんかん』にフォロー出来ていますか?」
藤谷:「出来ています」
2-3.チェックアウト
2-3-1.「作り上げる感じがあって、面白かったです」
関根:「ファシリテーターのロールをやってみたら、非常に勉強になりました。あえて議論には入らずシンプルにプロセスのファシリテートをする方が良いと。そこがわかったのが小さな一歩だったなと思います」
藤谷:「自分が出した『じゅんかん』が、2人で話合って着地させることができるっていうことが分かりまして、非常に納得しました。作り上げる感じがあって、面白かったです。ファシリテーターをしてみた感想では『どのロールが行いますか?』っていう質問が、わざわざする必要あるのかな、って思いました」
吉原:「言ったロールがやるのか、言われたロールがやるのか、で今後の作業が漏れやすいので確認する必要があります」
藤谷:「なるほど。どっちがボール持っているかを分かりやすいように」
2-3-2.「どのロールからの簡単に『じゅんかん』を出すことができる」
熊倉:「私も藤谷さんと同じ感想で、『じゅんかん』を出される側もいいな、と思いました。今までって小さな依頼なのに『〇〇さん、ちょっと申し訳ないんだけど、いいかな?』くらいだとすごい姿勢低くしてから聞いてみるみたいなのがあるじゃないですか。でもタクティカルミーティングではどのロールからも簡単に『じゅんかん』を出すことができる。なので『じゅんかん』っていう文化が根付くと、風通しが良くなるんじゃないかなと思います。」
吉原:「そうですね。非常に話しやすくなると思います」
3.今後の取り組みの方向性
3-1.心と頭の循環を高めていく土壌づくりを広げていく
熊倉:「イメージとしては、この自主経営の動きっていうのは続けていきたい、そして広げていきたい。どういう風に広げていくかというと、12月・1月くらいでマネジメントコミッティーがメンバーと目的地図を共有してどういう体制にしたいかというのを決めていきたい。
この第一フェーズで目的地図の共有と『じゅんかん』を出すことに慣れる事をやってきました。マネジメントコミッティーに広げる時は、目的地図の共有が出来れば良いと思っています。この目的地図ベースの組織にするにはどうしていかなければいけないか、という問題意識を共有できるようにしたいです。
仕事の縦割りの部分をなくしていきたいと思っています。営業の役割をたくさん持っている人、受注をたくさん持っている人、っていうのがチームとして集まって、お客様に対応していく。そういうチームを作りたい。自主経営をやりやすくするにはチーム制の方が機能すると思うんです。役職ではなく、役割ベースで考えていけるようになりたい」
関根:「『じゅんかん』。リードリンクが考えているところを聞きたくて、チーム制にしたときのリーダーが必要になると思います。そこについてどんな風な絵を描いているかお聞きしたいです」
熊倉:「マネジメントコミッティーの方々が、それぞれのチームのリーダーになってもらえるといいなと思っています」
関根:「マネジメントコミッティーは非常に個性豊かな人たちなので、どこまで、新しい取り組み内容を柔軟に受け入れてくれるかなという不安もあります」
熊倉:「目的地図を共有したうえで、次にどうすればいいのかっていうのを話し合うのが一番最初だと思っています。目的地図の共有やチーム制の検討は12月から2月くらいの3か月間でやりたいなと思っています。なので、4月から実際に新しい年度が始まってから、マネジメントコミッティーが4人いるから、4チーム一気に作ってしまっていいの?という議論はしなければいけないだろうな、と思います。逆に1チームだけ作ってみるっていうのもありかもしれない」
3-2.やってみてどうなるのかを見て行きながら、イメージを作っていくプロセス
関根:「1個だけチーム作るとしたらどこになるかなぁ」
熊倉:「いま営業は4つ課があるから、その内の一つの課をチーム制として伸ばしていくのはどうだろうか」
藤谷:「物流センターが綺麗に分かれない気がします」
熊倉:「そうですよね。物流センターを無理やりチームの中に入れる必要はないと思っています。あくまで事業の目的地図を回していくチームになっていればいいと思います。これからの世の中、営業がただの御用聞きだったとしたら、まったく価値がない。お客様に対してどういうことが出来るかっていうことを提案できる方が価値がある人材になってきているし、それをチームとして提案できる方がより満足度の高い提案につながると考えている」
吉原:「心の循環の高い土壌づくりが大切だと感じています。そのため、まずは既に取り組み続けられている最高の価値観のワークを、マネジメントコミッティーのメンバー同士でも行うのは良いのではと思います。その時に『じゅんかん』っていう言葉を使うように出来るので、『じゅんかん』に慣れる事ができます。その後に、頭の循環の高い土壌づくりのために、目的地図を共有して『じゅんかん』を出せる土壌をさらにつくっていくというのは大切だと思います」
熊倉:「そうですね。それで、役職や個人で仕事をするのではなくて、役割ベースで仕事をできるようになれば良いですね」
【参考:話し合いの最中に作成した今後の取り組みの方向性についての簡易目的地図】
ご覧頂いたように、セルメスタでの取り組みフェーズⅠでは、心の循環である最高価値を土台にして、目的地図の進化のプロセスを実験的に経営者とシステム部門のマネジメントコミッティーメンバー、マネージャーの3名で進めてきました。次第に、目的地図に慣れていき、頭の循環が良くなってきています。
また、目的地図をもとに、構造面であるロールづくりについても、変化し進化していくことを体感してきました。ロール同士の会話も『じゅんかん』をサインにして、次第に慣れてくることができています。こういった変化を感じながら、取り組みフェーズⅡとして、現在の3名に加えて、残りのマネジメントコミッティーも一緒に、心と頭の循環を高めていく土壌づくりに歩みを進めていきたいと思っています。
フェーズⅡも、セルメスタからの実況中継を楽しみにしておいてください^^